今わの際に残したい

そんなわけない、死んだあとインターネット・タトゥーとしてひっそり残り続けるオタクの記録。

江おんすていじ。伏線なんて自分で考えなさいな、ってことかもしれない【刀ミュ】

 

f:id:kodomoa:20230207171221j:image

(松井のオタク君ワイ、絶命の図)

 

江おんすていじが1月22日に千秋楽を迎えた。

今回もご多分に漏れずめちゃくちゃ観に行った。そして毎回お約束のようにバチクソに泣いた。東京公演(現地)、初日のアーカイブ配信、千秋楽のライブビューイングと振り返り公演も購入して、通算7回くらい観たんじゃないだろうか。

いや、流石に観すぎだろ。何回擦んねん。気持ちはわかる。というかなんなら自分でもうっすらそう思ってる。でもこうでもしないと毎回良すぎて記憶を飛ばしているので、なんか良かったんだよね…?という浅すぎる感想しか抱けなくなるのだ。いやそれだけにとどまらない。果たして江おんすては本当に存在したのだろうかとすら思うのだ。…正直何を言ってるのかわかんないだろうが、CDやDVDは向こう半年以上出てこない。ということはつまりそれまでの間はこの江おんすてがワンチャン幻覚の可能性だってありうるのだ。なんか、夢だったんじゃないかな…?って毎回見終わったあと思うんだよね。

そんなわけでまだ観られるチャンスがあるうちに擦りまくり、覚えているうちにここに感想を残したいと思う。

 

今作は数あるミュージカル刀剣乱舞シリーズの中でも珍しく(?)誰も死なない、病まない、トラウマを植え付けない三拍子そろった、本丸での「日常回」である。しかし今回も、これまでの心をへし折られた数多の経験からして終始怯えきっていた。「お芝居が白熱し過ぎて勢い余って仲間同士で切り合ってしまったらどうしよう…」とか「これは実はすべて篭手切江の夢で、実際は戦っている最中に江のメンツがやられてしまい現実逃避のために見せている妄想なんじゃ…」とか物騒&不謹慎すぎる予想をしていた。だが安心して欲しい。純度100%の優しいお話でした。見終わった瞬間、多幸感と愛しさが沸き起こるまさしくこれがラブ&ピースだった。

そんなわけで、ストーリー自体はそこまで難しいものではなかった。フワフワとした伝承のみが残る自分たちに"物語"はあるのか自問自答し、だったらこの本丸で自分たちの思い出を作ろうと、すていじ(歌劇)を作るというのが大筋である。ゆえに歴史上の人物も今回は出演しない。そもそも江のメンツは登場ボイスでさえもあまり多くを語らないことから原作でもよくわかっていない要素が多い。共通して言えるのは刀工である郷義弘の作であるということだけ。というか、刀工自身も存在しているかはっきりとしたことはわかっていないから、現時点で実存しているかどうかも不明な刀も多い。そんな彼らが他の刀剣男士と触れ合うことでこうした悩みにぶつかるのは至極当然のことと思えよう。

シリアスに振ることも当然可能のはずだが、ここはあくまで江たち。特にミュ本丸の江といえば、原作の斜め上を往くキャラの濃さ。加えて追加キャストといえば「おもしれ〜男」を素面で貫く水心子と「お前が陰キャなわけないだろ選手権2022年優勝」の大典田光世である。結果的に全員ボケ倒すというツッコミ不在のミュージカルとなった。というより、元よりミュそのものがツッコミ不在なところがあるし、時に演出含め人類に早すぎる場合もちょこちょこあるので、これが通常運転なのかもしれない。

しかし侮ることなかれ。笑っているとふとしたセリフや曲でいともたやすく涙腺を破壊してくる。一部・二部・三部ともに全く油断できず隙がなかった。でもオイラ負けないよ。なんてことはなくて、先述した通りどの部でもオイオイ泣いちゃった。だって、それもそのはずで篭手切江の長年の夢だったすていじができるんだという思いで胸がいっぱいになる。

 

まず冒頭の『ものがたり』の時点で泣けてくる。思い返せば伊達双騎ん時も最初の伊達政宗のソロで泣いてたし(何故)さすがに涙腺チョロすぎんか?と思ったが良い曲は無条件に人を泣かせにくるのだ。そしてなぜ篭手切江がすていじにこだわるのか、それがうっすらと示唆されている。導入としては満点の曲だと思う。劇中劇といえば真っ先に源氏双騎が浮かぶが、いきなりスタートせずに三部立にしてでも背景を描いたのは個人的にかなりのファインプレーだと思っている。源氏双騎も今となってはあれはあれで正解だったような気はするけど、そうすることで初見でも困惑することなく安心して観ることが出来たのは大きい。この安心感を持たせる作りを今作は非常にこだわっていたように感じた。その一方でキャラの深掘りに専念したのだろう。

キャラの解像度といえば『すけっと ぷりーず』にはぶっ飛んだ。その名の通り各々が他の刀剣男士に"すていじ"を手伝ってくれるよう声をかけるシーンの楽曲なのだが、なんだそれ、可愛い。可愛いし、自分達が可愛く見せる振る舞いをしている。わざとだ。あざといのだ。あざといけど、嫌味じゃなくてあくまでコミカルなのがズルい。近年なんとなく「女性向け」の枠から脱したいんじゃないかなって思っていたから、ある意味では懐かしい演出とも言えよう。それに原作でのつながりや前の作品で同じ部隊だったからという刀もいれば、意外な接点を持つ刀もいて、なるほどこの江はこういう一面もあるのかと関心する。そしてそれぞれの持ち歌をアレンジして誘っているのはこれまでの作品を知っている人なら間違いなくグッとくる演出だろう。そう、察しの良い方ならお分かりだろうが今作は全体的にだいぶファン向けに作られていたものなのだと思う。

 

"影"が意味する篭手切江の夢とは

それもそのはずで先述した通り、この江おんすていじは篭手切江をはじめとした彼ら江にとっての長い道のりの集大成だったのだ。私たちは単なる一舞台を目撃したのではなく、彼らの3年越しの夢をリアルタイムで同時に追いかけていたのだ。

そもそも、ことの始まりは葵咲本紀が公演された3年ほど前までに遡る。ライブパートで最初に歌われる『私の夢見たすていじ・おうぷん』は葵咲本紀での篭手切江ソロ曲『未熟な私は夢を見る』をベースとされて完成形に至る。21年の壽乱舞祭で新たに登場した豊前、松井、桑名の三人が加入したことでパートが追加され、そこから今作で新たに五月雨、村雲が加入し、光世と水心子のパートも共に追加されている。そして過去公演では明かされなかった転調部分で「目撃してほしい 夢が真になる その時を」とあり、……なんかもう色々と涙出てくる歌詞なんだけど、それまでの道のり含めて追いかけてきてほしいと告げられているのだ。そして、ラスト「ぐらんどふぃなぁれ」では「かーてんこーる 目撃してくれたよね 夢が真になる その時を」と変化するのだ。つまるところ、我々は観客なのでなく、目撃者なのである。また、幕の節目節目に歌われる『ごう おん すていじ』では「長い影を引き連れて」とある。物語の冒頭、篭手切江は夢の中で自分の影に怯えていた。それがこの曲が歌われる一部のラストでは、一歩踏み出せるよう背中を押す存在に変わっている。すていじの光と自分たちの影がどういう意味を成すのか。「喜ばせたいというのは、そんなの建前だよ」と言うこてぎりの本心はそこにある。影が欲しいから、彼らは光ある舞台の上に立つのだ。ただの伝承、パライソでの豊前江が曰く"お化けみて〜なモン"じゃなく、間違いなく存在する者の証として影が欲しいのだ。怯える存在から自分を裏付けるものとして意味が変わっていくのだ。その影こそが私たち、存在する証拠としての審神者、つまり観客の存在なのではないかと思う。だからこそ、目撃者となってほしいと。彼の願いがうかがえるのだ。

そんなわけで一部のラストでは歌詞でも泣く。曲でも泣く。篭手切が一人で歌ってた頃を思い出しても泣く。情緒がマジでおかしかった。当然、同行者にはしっかり心配された。

 

「モノが語る故物語」な刀ステと「モノが騙る物語」の刀ミュ

ところで刀ステでは各回の冒頭、刀剣男士によるナレーションによって始まる。そこでは開口一番「モノが語る故物語」と語られている。ステオリジナルの文言なのか定かじゃないが、ステをどのように考え位置付けているのかがうかがえる表現で非常に良いと思っている。それに対してじゃあミュはどうなんだろう?と考えると"騙る"という言葉がしっくりくる。言い方には少々悪意を感じさせるが、なにかとこの刀ミュシリーズは刀剣男士が"誰かを演じる"ことでお馴染みである。今剣と岩融勧進帳義経と弁慶を演じることから始まり、みほとせ、パライソでは家康の家臣たちや天草四郎。源氏双騎に至っては劇中劇という形で髭切と膝丸は曽我兄弟を演じていた。今回もその流れは当然汲んでいる。むしろ今回なんてその集大成のようですらある。彼らは別の存在に成り代わり、なりすますことで自身の存在や役割を強く裏付けし理解しようとする。心理療法とかで「ロールプレイ」なんて言葉があるが、まさしくそれではないか。このミュ本丸にいる彼らは自分というモノ(存在)を"演じること"によって理解するのだ。いかに自分が元の主を想っていたか、反対に想われていたのか。また何者かに成り代わることで刀である自分たちの生まれた意味や役割を見つけたり、ヒトの生業を理解するのだ。こうして刀剣男士としての生き様が磨かれる。

そんな彼らが今回演じる生まれ変わった「南総里見八犬伝」はかつての主がなにかと後世で悪評だった村雲江のなんとなく腑に落ちないという思いをきっかけに作られる。

 

(持ち主の逸話はひどいわ二束三文で売られるわなにかと不憫な村雲江くん。にしても負け犬て…この謎俳句、やっぱり原作オリジナルなんですかね)

 

そのテーマは勧善懲悪からその先の復讐を断ち切ることを主題として強調されている。恨みを種や草木と表現し、育たぬようにすることで輪廻を断ち切ることができる、というテーマだろうが、これってよくよく考えたらとんでもないことである。勧善懲悪の八犬伝でよくもこんなとんでもないことをしてくれたと思う。村雲江に限らず、後世のイメージによって影響を受けた刀剣男士も少なくない。元の持ち主の色んな一面を知っている村雲江だからこそ、「おあいこだろう」と情を以て許すことができる。雪解けの話なのだ。題材として八犬伝を選ぶのもさることながら、刀である彼らがやるのもとんでもない話だと思うのだ。人の生き死にを操る彼らが、言ってしまえば「恨みの種」を生み出しかねない彼らが勧善懲悪がテーマの作品で愛を演じるというのは簡単なもんか。「戦いの道具である俺たちは間違いの道具ってことかよ」と思い悩んでいたあのパライソの時から、彼らは明らかに成長している。戦いの道具たちが出したアンサーが愛なのだと知ってあたしゃどんな顔したらいんすかね…

そんなわけでやっぱりテーマ・愛で語るべきは魔女である玉梓演じる光世と彼女に育てられた犬坂毛野演じる村雲江である。たびたび振り返る毛野の残虐な記憶の中で、二人の偽りだった親子愛がうっすら本物になっていく様子は筆舌し難いものがある。前述した通り、毛野は玉梓の愛を知って許すのだ。裏にどんな感情が隠されていたかわからなくても自分を育てた親として彼女を見逃す。劇中劇とはいえ、二人の演技を思うと刀剣男士としてのこれまでを感じざるを得ない。ていうかさ〜〜〜これ、現地だとわかんなかったけど光世、赤子を抱く時こんな顔してたんすか………マレフィセントやん……なんかマジでこれだけで今作観る価値あると思う。この表情一つで全涙腺が崩壊した。天下五剣だけに飽き足らず、お前は一体何になるつもりなんだ。歌うわ踊るわラップするわボイパするわ客を笑わせ泣かし、観客の喜怒哀楽は光世が握っていたといっても過言でない。何はともあれ、あれこそが光世の心であり、彼が知ってる愛なのである。

ほかにも、言わずもがな豊前の怒涛の一人二役は必見である。何がとは言わんが、すごかった。一部ラストの「マジかよ!」発言はこれのせいだったに違いない。流石の豊前もあそこまで走るとは思ってなかろう。

 

オマケ・ライブパート書き散らし

もうなんか色々想像の斜め上行き過ぎてどこに向かっているのかわからない。それは三部でも遺憾なく発揮されていた。むしろライブパートでその真価を発揮していた。すていじの上の彼らはヤバかった。ある意味刀をやめていた。刀剣乱舞ってなんだっけ?と大体のミュはそうなるんだが、今回はさらに上を征く。そんな3部を初見の曲を中心に、活きの良い感想と共に振り返ってみる。

 

光世・水心子ソング

前二曲がアイドルソングだっただけに突然の温度差でありとあらゆる変温動物たちが死んだ。なに急に?洋楽オシャソング流れてきたんだけど。zeddみたいなテケテンっていうSEはなんなんだ。ていうか水心子くんダンス上手いし、光世やっぱ歌うますぎんか?なんなん、「キツめのドリンク持った右手には無数のタトゥー」って。やっぱり陽キャじゃねえか。光世に無限の可能性を感じさせる一曲。あとさてはお前「Rouge on life(my life)」みたいな曲名だろ絶対。

→追記:残念!『Lose Your Mind』でした!

 

桑名ソロ

さっきまでのクラブは夢だったんだ…急に本丸の畑に帰ってきた。あ〜これこれって感じで落ち着く一曲。楽しそうでカワイイですね。ていうか桑名くん、初めて知ったけど歌声めちゃくちゃ通りますね??声デカくて最高です。


村雨・村雲ソング

エッなになになに????エッ二人ともなになになに??????エッ急に黙らないでくれ……エッなになになに????(終曲)

 

松井・篭手切ソング

で、出た〜〜最近味を占めてるDARA DARA DANCE系統。往年のボカロみを感じるイマドキソング。好きだ。なぜなら往年のボカロオタクだったから…

ダダダダラダラのつぎはパラパラパラパラサイトだった。


豊前ソロ

こわ…絶対落としにきてるじゃん。バイク要素が上手く出てて若干懐かしさを感じたからなんだろうって思ったら修二と彰だった。


真剣必殺ソング

ネバオーバーしててウィアカーニバルだった。これぞフェスティバルでカモンシェキナでしたね…

もはや和太鼓ですらなくてインド映画もびっくりな予想の斜め上をいく盛り上がり方でした。刀剣男士にどこまでやらせるのだ、ミュージカル刀剣乱舞とは…

 

 

 

もう刀剣男士は歌って踊るだけではなく、zeddになるわ修二と彰を一人でやるわマーチングバンドやるわハンドベル鳴らすわ、そんな時代なのである。盛りだくさん過ぎてお腹いっぱいを通り越してはちきれそうだ。そんなわけでこれだけ語っておいて大変浅すぎる感想だが、「本当に最高だから見て欲しい」の一言に尽きる。久々にエンタメに物理で殴られた。ミュ自体まだ観たことない人は他の作品から観るとメンタルやられる可能性もあるので、まずは彼らの頑張りや活躍する姿を見てキュンとするのはどうだろうか。そのあと別作品の温度差で死ぬかもしれないが。

 

 

 

 

いや〜〜〜今回も最高だったな、ミュージカル刀剣乱舞

江おんすていじ、かぁ…さっそく忘れないうちに色々ツイートするか…

 

f:id:kodomoa:20230128012721j:image

 

ん?

 

f:id:kodomoa:20230128012730j:image

 

あれ…??

 

 

そういえば結局、心覚ってなんだったんだ…????

あと倶利伽羅江さんは本当になんだったんだ…?

 

 

「俺たち江はッ…!!」で終わってたアレ。伏線回収としてはこの上ないタイミングのアレ。奇遇にも水心子と光世もいることで明らかにその話した方がいいだろと思わざるを得ないアレ(心覚)

 

結局今作も何も明かされないまま、伏線は依然として伏線のままお預けの状態である。

果たして明かされる日は来るのだろうか。まだまだ震える日は続く。